なんと頑な態度なのだろう。
さっきから呼んでいるのに一向に返事をしない!

「ねぇ、ウォースラ」

「・・・」

「アズラス!」

「・・・・・」

「ウォースラ・ヨーク・アズラスさん」

「・・・・・・・」

「ム〜〜〜〜ッ、将軍!!!!!」

「−−−!!??」

書き物をしていたその相手の背中に思いっきり抱きついてやった。







Sweet Kiss VOSSLER





「一体何を考えているんだ!!!」

「こっちのセリフだわ、返事もしないなんて」

「折角書いた書状が使い物にならなくなったんだぞ」

「書き出したばかりじゃない。それとも私が書き直しましょうか?」

「そうじゃないだろ」

「だったらお返事して下さい。淋しいじゃない」

「・・・集中していたんだ。返事が出来ないことぐらい見れば分かっただろ」

「集中?私には気がそぞろに見えたけど??」

「な、何を言う!」

「心当たりが無いとでも言うの?私これでも情報収集役を担ってるんだけど」

ッ!!」

「何だか不審な行動を見たと証言があったくらいよ」

「してないぞ俺は」

「それを確認したかったからここに来たの。貴方の信用問題に係わるかと思って」

「・・・・・・」

「もし何かあるなら私には言ってくれない?」

「いや、、、、、、、」

「それともまだ早いなら私が先でもいいかしら」

「−先?何を」

「目、瞑って−」

無理やりにの掌で視界を遮断され机に何かが置かれた音がした。
カサリと紙が擦れるのを耳にした時いきなり「口を開けて」と催促された。
突然そんなことを言われ承諾せずにいると急に甘い香りが鼻につく。
そして口元に冷やかな感覚が訪れ強引に押し込まれる。

「っ―!?」

目の前が急に明るくなり細く目を置けると、腰に手を当て目の前までの顔が近づいていた。

「ハッピーバレンタインよ」

「これの何処が、、ハッピーだ・・」

「普通に渡したら照れて食べてくれないと思ったから」

「だからと言って無理に食わせるとは・・・」

「でも分かって食べてくれたでしょ」

「・・・・・・・そうじゃない」

「私―」

そんな所も好き。だから。

「伝えようと思って、自分の気持ち」

彼とテーブルの間に無理やり立ち思いっきり大きく息を吸い込むと、いきなりその口を彼の掌が遮った。

「っ待て!どれだけ声を張るつもりだ」

手を除けてつっぱねる

「想いの大きさに比例するのよ」

「そんな事はしなくても通じるだろ」

「チョコ食べてくれたのに言わせてくれないのね」

「十分伝わったからいい」

「変な噂流すわよ」

「今度は脅しか。でもダメだ」

「いつも聞いてくれないのだから今日くらいいいじゃない、ね?」

と反則的に今度は優しい口調で攻め寄ってくる。
言葉巧に駆け引きをして相手を手中に収めようと
揺さぶりをかけられて反発する心を次第に傾むかせる。

「いいでしょ??」

「・・はぁ、、分かった。。。。。一言だけならな」

「ホント?!」

「但し単刀直入な表現は絶対にダメだ」

「どうして?」

「他のものに聞かれては困る」

「意味ないじゃないそれ」

「元々普通でいいところを大目みているんだぞ」

そうねと、渋々了承しただったが一息つくと微笑みだした。
まさかとは思いつつも用心するに越したことはない。
何をするか分からないのが彼女なのだから。

深呼吸し相手が発する一言目を用心深く身構えていると大きく開かれた口。

「―あ」


まさか――





『愛してる』とダイレクトに言うんじゃないかと思い焦った。

咄嗟にの体を挟むように両手をテーブルにつき、逃げられないようにして、その口は自らの唇で封じこめる。
一瞬何が起こったのか分からない様子でパチパチと瞬きをしているだったが、
グイとウォースラの胸元を押して顔を赤らめながら怒り出す。

「最初からそのつもりだったのね?!」

そんな彼女の必死な姿が妙に可愛いらしくて。

「やっぱり言葉はなしだ」

「私は貴方に―」

「こっちの方が伝わる気がするのは俺だけか?」

弁解の時間すら貰えず再度重なる唇。



『あなたの事を誰よりも想っています』


そう言えなかった言葉の分をキスに籠めて何度も何度も伝えなくては―